まずは、大雑把な話から始めていきましょう。
一口に「流れ」と言っても、状況に応じて様々の性質・特徴を持ちます。いろいろな研究の結果、いくつかの指標(ものさし)によって、これらの特徴が決まることが分かってきました。
このような指標(ものさし)は単位(m/sとか、Kgとかといった「単位」です)を持たない量となっています。このような量を一般には「無次元数」と呼びますが、これら無次元数のいくつかによって、流体の性質を分類することができます。ちなみに有用な無次元数にはその分野で偉大な功績をあげた人の名前がついていることが多く、ここであげるものもすべて人名です。
「流れ」のものさしの大事な2本の内の一本です。よくReと書かれます。その定義は
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ただしUは「代表速さ」、Lは「代表長さ」、μ/ρ=ν は流体の動粘性係数です。(μは流体の粘度、ρは流体の密度)
「代表速さ」は、その流れにおける”代表的な”速さです。何をもって”代表的”とするかにはいろいろな決め方がありますが、着目している現象に関係した速さにとるのがふつうです。代表長さも同様。「動粘性係数」は温度と密度から決まる値で、理科年表などを見れば値を知ることができる、いわゆる”物性値”です。
さて、このレイノルズ数を「ものさし」とすると、その値により下の図のように流れの状態が変わることがわかっています。
レイノルズ数Reが0〜約3000の状態では、流れは「層」をなして流れます。このような流れを「層流」(laminar flow)と呼びます。水の層流にインクを垂らすと、インクがすーーーーっつときれいな線を描いて流れていきます。下の図はタンク内部からパイプへと水が流れているときに、タンク内部に置いたインク管からインクを流したときに、層流の場合のインクの様子を表しています。

一方、レイノルズ数が約3000を越えると、流れの状態は急激に変化し、大小の渦が入り乱れながら流れていく「乱流」(turbulence flow)と呼ばれる状態になります。水の乱流にインクを垂らすと、大小の渦により混ぜられ、すぐに目には見えないくらい薄まってしまいます。私たちの身の回りで見られる流れは、たいてい、この「乱流」の状態です。タンクからパイプへ流れ出す流れが乱流の場合には、インクは下の絵のように、途中でかき混ぜられて見えなくなってしまいます。

なお、ここで「約3000」と書いたのは、流れの状態や条件によって、この層流と乱流の境のレイノルズ数がかなり変化するためです。(実験の様子をこちらに示します)
さて、レイノルズ数がものすごく大きく、無限大に近い極限状態はどのような状態でしょうか?
このような状況はUやLに対して動粘性係数νが小さくなった時に生じるわけで、近似的にν=0と見なせる場合の流れです。このような流れを「非粘性流」と呼ぶことがあります。実は、私たちの身近な流体である水や空気は比較的動粘性係数が小さいため、この「非粘性流」と見なせる流れをよく見かけることができるのですが、あくまで「近似」であり、実際には(小さいながらも)動粘性係数が存在すること、レイノルズ数が小さい場合には「非粘性」とは見なせないこと、に注意する必要があります。
非粘性流は実際には存在しないのですが、数学あるいはコンピュータの中のシミュレーションとして、これを見ることができます。このとき、流体はまるで層流のようにきれいな層を描いて流れていきます。乱流という乱れた流れの極限において、ふたたび乱れの見えない流れが生じる、というのは面白いですね。
さて、流れの「ものさし」の2本目の大事なものがマッハ数で、記号ではMaと書かれます。定義は
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です。Uは上でも出てきた「代表速度」、aは音速です。よく飛行機の速さを「マッハXX」と呼びますが、それは代表速度として飛行機の飛ぶ速さを、aとして地上での音速を使った表現です。(水中では空気中の数倍の速さで音が伝わることもあって、船や潜水艦ではマッハで速さを表せるほどのスピードはまだ出せません。)
このマッハ数を物差しとすると、流れは下の図のように分類できます。

まず、マッハ1以下の流れと、1以上の流れでは流れの性質が大きく変わります。このため、マッハ1以上の流れを「超音速流れ」、1以下の流れを「亜音速流れ」と呼んで区別しています。
また、マッハ数が約0.3以下の流れでは、流体の密度ρの変化を近似的に無視できる場合が多いです。(ρの変化が約1%以下になるのがマッハ0.3です。)そこで、便宜上、マッハ0.3以下の流れを「非圧縮流れ」、0.3以上の流れを「圧縮流れ」と呼びます。ここで、本来すべての流れは「圧縮流れ」であることに注意してください。このマッハ0.3の目盛りは、流れを考えるうえでρの変化を無視できると考えやすくなるという人間の都合で決めたもので、自然界が決めた目盛りではありません。(これに対してマッハ1の目盛りは自然界が決めたものです)
水の音速が非常に速いので、私たちの身の回りでは水の流れにおいてこの「非圧縮流れ」と見なせる流れが多く存在します。ですが、もし水の中に泡(バブル)がある程度混じると、音速は急激に落ちてマッハ数が上昇し、もはや非圧縮流れとは見なせなくなります。
また、マッハ数が0.3以下であっても、音波の伝播を考えるのであれば、当然ρの変化を無視するわけにはいきません。
このように非圧縮流れの扱いについては若干注意が必要ですが、なんといっても知りたい量のうち1つが一定値となってくれるのは大変にありがたいので、よく用いられています。
「もんじゅ」での温度計の破損事故はまだ耳に新しいですが、あの場合のように、物体が流れのなかで振動する場合に、このストローハル数の「ものさし」が役に立ちます。
海の波や津波など、「波」の現象において大事になるものさしです。安っぽい特撮映画の波がオモチャじみているのは、フルード数のことを知らないで撮影しているからかもしれません。
熱が伝わる現象において、ものさしとなる無次元数です。伝熱工学では主役を務めていますので、講義で何度も聞くことになるでしょう。
宇宙空間や半導体の製造過程などの圧力が低く、真空に近い状態での流れにおいて、重要となるものさしです。
実用に使われている機械においても、「ものさし」となる無次元数を見いだすことができます。ポンプの場合には、流量係数が大切な無次元数です。この件については、後の方で「相似則」としてお話する予定です。